「アタシさ、後ろ怖くて乗れないんだ。」
昔から自分一人で乗ったり、後ろに人乗せたりは出来るのに、何故か後ろには乗れなくて。もし乗ってスピードなんて出されたら、あたしはきっと気絶すると思う。
絶対バカにされると思って言った言葉なのに、だけど違った。
奴はすごく驚いたような、愕然としたような表情を浮かべた。
「そー…なんか。」
仕舞いには馬鹿にさえせず、奴はただ瞳を伏せて言った。
「漕がんから、後ろ座っとけ。」
すぐにあたしを荷台の乗せた自転車は進みだす。ハンドルを持って歩く亮。
「なんだか優しすぎて、気持ち悪い…」
「俺、老人と怪我人には優しいねん」
「うそつけ。」
「おまえ重いわ。」
「死ねよ、こら。」
すぐに奴が悪態を付き初めてあたしの心は変に安心した。虐められる事に慣れすぎちゃったのかな、なんて。
「きーらきーらひーかーるおーそーらの星よ、ね!続き歌って!」
「まばたきしてはみんなを見てる、っていってるやろ。でお前が歌うパートが繰り返されんの」
「きーらきーらひーかーるおーそーらのほしよ、次は?」
「みんなの歌が届くといいな、や」
「はい!では最初から!」
揺れる、揺れる、自転車。大好きな空の時間。なんだか奴の背中が大きく見えた。
「りょーすけ!ほら、一番星!」
案外アンタの事、
嫌いじゃないかもね。