「あ……」



そして、いつの間に来たんだろう。ちっとも気付かなかった。保健室の扉にもたれ掛かる奴と目が合う。




「まばたきしてはみんなを見てる、やろ」




奴は、呆れた表情を浮かべながら先程の台詞を同じように言った。

な…なんだ。



「…アンタの声か。」

「…は?」

「ううん、なんにも。」



でもヤケに幼い声だった気がする。すごく懐かしいような、違うような。

一体、なんなんだろう。



「…はよ帰るぞ。」



そう言って手首を捕まれて保健室を出た。向かう先は自転車置き場。




「ほら、後ろ乗れ。」




自転車の前まで行くと、そう言われた。ありえない事に前を漕いでくれるらしい。

そりゃ鼻は痛いけど、いや身体中痛いけれど。