「うえっ!?なっなに!?」
パッと顔を上げると、そこには奴の顔。
「う、わ…」
あまりにも近くて、らしくもなく胸が高鳴る。
そしてすぐに観客席から女子の悲鳴が沸き上がって意識は覚醒した。
「おっ…おろして!」
恥ずかしくてバタバタ暴れると奴はあたしの力を余裕で封じて言った。
「うっさい。鼻抑えて上向いてろ。」
あたしは真っ赤な顔して鼻を抑える。変に奴を男だと意識してしまった自分に少し惨めさを感じた。
そしてすぐに揺れだし、もう恥ずかしくて堪らない。
不安定な腕の中、片方の手で奴の体操服を掴むと血が付いて汚れたのが見えた。
「先生、保健室行ってきます」
「はいはい」
抱っこされたあたしを見て、ニヤリと笑う相場先生が横目に見えて少し恨んだ。