そりゃかっこいい顔してると思う。黒髪はなんとも言えない程似合ってるし、少し垂れた目だって、唇だって。だけどそんな事認めたくなんかない。廊下には“イケメン転校生”を一目見ようと女子の群れ。そんな女子達を知らん顔してアタシの頬を我が物顔でつねる奴。ああ、今日は絶対裸足で帰ることになりそう。





‐act.08‐




「いったぞー!」

「逆転ホームラン!」



6限目の男女混合体育で野球。みんな元気だな、なんて呟くアタシは体育担任の相場先生の隣。ただでさえ、苛められすぎてクタクタなのに野球なんてやれない。



「いや、おまえもやれよ」

「若くないんですー」

「ぜってー単位やらねぇ」

「そんな無慈悲な。」



口の悪い相場先生はなんだか先生というより友達。



「てか、あれお前の彼氏?」

「………は?」

「すげー睨まれてんだけど。」



相場先生が遠慮ナシに指差したのは、まさしく奴。ジ、っとコチラを見据えていて、なんだかとっても怖い。




「いや、疫病神なの。」

「は、疫病神?」

「先生、アタシ虐められてるんです」



アイツが周りに見せつけるようにあたしを虐めるから初日で既に3組の女子グループに呼び出された、と言えば先生は何か理解したように笑った。

…なにが笑えるんだ。こっちは本当に困ってるのに。この体操服だって探すの苦労したんだ。

バッターの順番が回ってきて、呼ばれたあたしは腰を上げる。





「好きな子程いじめてーなんて、まだまだガキだな」

「ん、なんかいった?」




クク、と笑う先生に頭を傾げながらバッターボックスに向かった。

あーもう、若くないって言ってるのに。