今晩は絶対眠れないと思ってた。下にあの悪魔がいると思うと一瞬の隙すら危険。だけれど、あたしの神経は思った以上に図太いらしく羊は6匹しか柵を飛び越えなかった。そして、久しぶりに夢を見た。一人の男の子が公園で泣いている夢。どうして泣いているのかも、なにが悲しいのかもわからない。その空には星が輝いていて、あたしはその星を指差して言ったの。…あれ、何て言ったんだっけ?まったくこれだから、夢ってやつは。



‐act.06‐




「───よ、起───ろ。」



うっすら目を開き、陽が眩しくてまたすぐ閉じた。

まだ寝かせてよ、お母さん。昨日宿題がなかなか終わらなくて、なんて毎日同じようにごにょごにょ寝返りを打つ。





「───遅刻す」




遅刻?たまにはいいじゃん。ま、しょちゅうだけどさ。だって今日は月曜日、月曜の一限目といったら…





「岡田先生の国語ーっ!!」





慌ててガバッ!と起き上がると、おでこに激痛が走った。





「いたたた…」





なんだ、なんだ。どこだこの部屋。やけに天井が低いぞ。なんて呟いてズキズキと痛むオデコを擦りながら横に置いてある時計を見ようと顔を動かした。






「謝らんかい。」






そして視界に映ったのはあたしと同じようにデコを擦る、…………あ。





「…やだやだ、まだ夢みてるみたい」




現実逃避。わかってるわ、そんな事。

だけどあの顔はヤバい。ヤバすぎる。昨日今日会った奴だけれど、あの表情のヤバさは痛い程わかってるんだ。

もう一度眠ろうとベッドに潜り込む。どうか夢であって。お願い、お願い、神様。

次の瞬間、布団が捲られて、思いっきり頬をつねられた。




「夢、ちゃうやろ?」

「はひ…すみまふぇん」




ぎゅうううう、とつねる奴の笑顔は悪魔みたいだ。いい人ぶって騙したところを取って喰う、そんな頭のいい悪魔だと思う。

そしてその悪魔のターゲットは、今現在アタシなんだと確信した。