……ここはどこだろう。…私は、誰なのだろうか。ああ、思い出せない……。


……また、そんな幻想を見ていた。



あたたかい風が私の長い黒髪をそっとなびかせる。


高校生。それは人生で一番青春する時期である。


…でもそんなことは私には関係ない。


私には過去の記憶がない。そのうえ両親も他界している。


…私は中学二年までの記憶がない。だから知りたい。自分が今まで何をしてきたのか。


そのとき
「あの…三日月…っ月乃ちゃん、だよ…ね?」


私の名前。後ろを振り向くとそこには、薄茶色で腰まで伸びている髪をした女性が立っていた。