「紳士、淑女のみなさん。今回はお集まりいただきありがとうございます。
今年の舞踏会でもみなさんの…」
始まりの挨拶をする司会者も仮面をつけている。
この舞踏会がどれほど徹底しているものなのかわかった気がする。
それほど好きな人と踊らせたくないみたい。
まわりを見渡してティボルトを探すけど
、この人数の中で見つかるか分からない
この人数の多さに諦めがついてきた
2曲目は一緒に踊れるからいいかな…
そんな風にあたりを見渡すと視線を感じた。
斜め前、50m先ぐらいにひとり、男の子がこっちを見てる。
なぜか…目が離せなかった。
二人して見えない目を見つめあっている
「それではみなさん舞踏会を始めましょう」
司会の声を合図に人が一斉に動き出す。
みんながそれぞれわからない相手のもとに近づいていく
ただの気まぐれかもしれない。
でもわたしはまっすぐに進んでいく
人影に隠れてしまったあの男の子を探す。
20mほど歩いたところでその男の子の姿が見えてきた。
口元に笑みを浮かべながら近づいてくる
「よかったら踊りませんか?」
礼儀正しく右手を差し伸べる彼に
躊躇なく手をあわせる
「喜んで。」
彼の指が触れるその瞬間、胸があつくなっていく
「名前を伺っても?」
「ジュリエット、ジュリエット モルティネス。 」
「ジュリエット…?」
すこし困惑した彼の声に顔を向ける
一拍おいて、笑顔をみせる彼に懐かしものが心の中に広がっていく。
この街に来て、最初に感じた違和感が溶けていく。
「僕はロミオ。よろしく、ジュリエット」
間を置いて、ロミオがリードしていく。
いつのまにか音楽が始まっていた。