「佐野は、自主練してたの?」

「ん?あ、ああ。俺サッカー下手だし?」


嘘は言ってない。

でも本当はお前のこと忘れようとしてたんだけど……。


「俺、やっぱレギュラー取りたいし」


なるべく満面の笑みで返す。

不自然じゃなかったかな?

と、春田が笑った。

ふわっと、花が咲くように。

まるで、本当の蘭の花のように。

胸の鼓動がまた鳴り出した。

あまりにもその音が大きくて、何も聞こえなくなり、何も考えられなくなり、気がついたら俺は、春田にキスをしていた……。