「ちーす」

保健室は真っ暗で、誰もいなかった。

「あ、そういや今日朝のホームルームで担任が言ってたな」

「あ、えっ、そう言えば今日は保健の先生がいないから怪我しても対応できないからって言って…」

「好都合だな」

「え??あ、てか前田君は??」

「さぁー、あいつなんか女子から呼ばれてたわ」

「そうなんだ、やっぱりモテモテなんだね」

「そうなんじゃね??」

「そっかぁ。本田君もモテるんでしょ??」

「さあな??それより本田君ってそれ、止めろよ。気持ち悪い」

「はぁー!!仕方ないでしょそれがあなたの苗字なんだから」

「名前で呼べよ名前で」

「な、なま…」

「ほら、言ってみ??…基羅って」

本田君は微笑む。

「な、なんでよー」

「ほら言えよ」

そう言って本田君は私に少しづつ近づく。

「ちょっ、」

なんか危険な気が。

私は後ろに下がる。

だけどもう、壁が背中に当たってて。

なんでこんな時に壁よ!!

少女漫画じゃあるまいし!!

って、そんなことを考えていたらもう、目を話せない距離にいた。

ち、ちかい…

「早く言わねーとキスすんぞ」

「はっ、えぇ??」

なんか今…。

って!!本気ですかぁ!!??

「やっ、あのっ。」

「なにためらってんの、言えばいいだけだろ」

「ちょっ、やめ…」

「もういい。言わねーから無理矢理でもキスするからな」

「はっ、えっ、…ふ」

な、なんで…??

わ、私キスされて…

ゆっくりと本田君は私を離す。

「わり。まじしてしまったわ」

「な、」

「お前が言わねーから。俺先に言ったよな」

「…てい」

「あ??」

「最低っ、」

私は勢い良く立ち上がり保健室を出た。

なによ。

訳わかんないっ!!

そういうなんの感情もないくせにするのが一番嫌い。

もう…なんで…

ドサ

「いでっ」

次の瞬間誰かとぶつかった。

「ご、ごめんなさ…」

「野口さん??」

「え…あ…」

なんでこんな時に。

ぶつかった人は前田君だった。

「どうした??」

「いや、えっと…」

「…泣いてるの…??」

私は慌てて涙を拭く。

「ううん!!なんでもないっ。じゃあね!!」

私はそれだけ言って教室に戻った。