礼次郎さんが帰った後、俺はカフェテリアに残って1人でぼんやりと考え事をしていた。



道を行く人たちはみんな急ぎ足で、みんな「私には大義名分があるんだ」とでも言いたげな表情を顔に張り付けているのがなんだかとてもおかしかった。


自分の役割、ちゃんとわかっててちゃんとこなしてて、でもそれで切り捨てられてきたものが山ほどあると思う。

短い人生、やりたいことやり遂げたいことがたくさんあるのは当然のことで、それを責めちゃいないけど、でもたまには立ち止まって、こうやってゆっくり四肢を伸ばしてくつろぐことも必要なんだ。



そうでもしないと、いっぱいいっぱいになっちまうから。


そうなると人間は、他人に当たり散らすから。


そのせいで誰かを傷つけて、どこかで誰かを泣かせてしまうから。




でもゆとりを持つためには、結局金が必要で。
そのために働いて、それをなくして、気づけばどうして金が必要だったのかを忘れてる。






目を閉じれば、ビル街の間を吹き抜ける排気ガス交じりの風が俺の髪をなでていくのがわかる。足音、走行音、どこかで鳴らされるクラクション。






目を開けて、立ち上がった。

とりあえず家に帰ろうと思った。