不思議な気持ち…









私の両方の頬を手で持って 

真剣な目で怒っている



哲郎の顔を見ていたら…





私も、言葉が一気に流れ出てきた












「だって…哲郎は
謹慎室でも、したじゃない!
すごく簡単に指を握ったり!
後ろからギュってしたり…
いつも、女の子に囲まれてて
私には、挨拶も
ほとんどしてくれないのに
いきなり、ギュってしたりして!
その後も、何も言わないし
知らん顔して!話かけてもくれない!
私は…おふざけで…されたと思って
私は…からかわれたと…
思うしかなくて。」














そこまで言うと





哲郎が、もう一度




さっきよりも強く私を引き寄せて

きつく、抱きしめた。







私の頭も、自分の胸に引き寄せて

私の頭を何度も撫でた…














「ごめん…ヒカリ!
もう、言わなくていいから
わかったから。」













まるで私をなだめるように













哲郎は、何度も何度も

優しく私の頭を撫でる







私は、少しづつ

体の力が抜けていった…







哲郎の胸に、自然と頬を寄せていた。











私の髪を何度も何度も撫でながら

優しい声で、哲郎は言った














「ヒカリ…俺…
体が勝手に動いたの
あの時も、今日も…
自然と体が動いてギュッてした。」













「…うん。」













哲郎は、私の頭に、唇をくっつけた








唇を、くっつけただけで

これは、キスじゃない…









哲郎は不思議な動きをする





まるで、私の体温を確かめるように



私の頭に

唇をくっつけたまま動かない





哲郎の手は、私の頭を何度も何度も

撫でている…



いやらしい感じは全くない



まるで、私をなだめているような動き…














「完全に俺、順番を間違えたんだな!
ギュッは、まだまだ後だよな
…うん。」












哲郎は、そう言いながら

そっと、私を、自分の体から離した









哲郎は手で、私の乱れた髪の毛を

整えていた…






ぎこちない手つき。

















「ヒカリ…俺さ!
大切な人に対してすることの
順番を間違えたみたい…!」















「……?」














「いや、なんでもない!俺が悪いの!
だから…また、来るから!」




それだけ言って哲郎は、

練習着のポケットに手を突っ込んで



グラウンドの方に少し急ぎ足で
戻っていった。





また…哲郎の動きに

ついていけなかった私!







誰もいない踊り場に

私は、1人取り残されてしまった。





まるで…謹慎室から帰る時のような

意味のわかない哲郎の動きを考えて



その場に立ちすくむ。








突拍子のない行動をするくせに

言葉の少ない哲郎。





動物レベルに行動が読めなかった





うちで飼っている
愛犬のペコちゃんの方が

わかりやすいかもしれない…










そんな哲郎でも

女の子の人気者なんだと

…ため息が出た





私は、踊り場を出て

周囲を念入りに確認した







誰の姿も見えない…春休みでよかった



あんな、痴話喧嘩のような
哲郎との行動を





誰かに見られていたら

学校中の大騒ぎになってしまう





意味のわからない行動で



嫉妬の嵐に
巻き込まれるのは避けたかった








春休みでしばらく

学校に来る事もない。



私は、靴を履いて駅に向かった










一年生から同じ車両だった?



私に彼氏がいることを知っていた?



私のシャンプーの香りを知っていた?



私とは挨拶もほとんどしない?



大切な人にすることの順番を間違えた?










哲郎の言った言葉を整理しようと

何度か繰り返し考えてみたけど 



哲郎の頭の中を理解する

クロスワードを完成させるには





ヒントが少なすぎた…