サトル君は電話の向こうで
呆れたような声に変わった。



「それでぇ…
ある日、突然哲郎に…
その女の子と友達になる
チャンスがやってきたのね!わかる?」



「ほぉぉ!
うん、わかる!チャンス!」




「…ほぉぉって!
まだ、説明しないと
わかんないのか?
だから、高校生活もあと1年だから
心残りのないようにだね…
体当たりするつもりで行け!!と
俺が、哲郎に言っちゃってぇ!」




「うんうん!
それで、どうなったの?
その、片思いの女の子と哲郎は!」



「ヒカちゃん……本気??
本気で続きが聞きたいの?w」



「そりゃ!ここまで聞いたんだから
聞きたいよぉ。
あっ、でも、
哲郎から聞いた方がいいかな?
陰口言ってるみたいに
思われちゃうのも、嫌だね!」



「いや、陰口にはならないよw
哲郎も、反省してたくらいだもん!
その女の子…思ってた以上に
鈍感だったらしいからw」


「そうか…
伝わらなかったの?
哲郎の気持ち…」



「うん…ふざけて
哲郎が抱きついてきた!
って…思っちゃったみたいだね!
その、片思いの女の子…!w」



「………えっ?」



「哲郎がふざけて…そんなこと
するわけないんだけど!
でも、哲郎も反省してたよ
もっと、女の子に対して話す言葉を
勉強しておけばよかった!って。」



「言葉が…
少ないから誤解された?」



「あはは…w
哲郎、初恋だったからさぁ!
好きな女の子に、何を言っていいのか
わかんなかったんだって!!」



「体が勝手に動いちゃった?哲郎…」



「みたいだね…w
めちゃくちゃ凹んでたから…哲郎!
だから、俺が電話したんですよぉ。
でも、ここまで鈍感とは
思わなかったよ!
マジ!!ヒカちゃん…
すんごい鈍感なんだね…天然?w」



「やっぱり……私?
ってこと?」



「他に誰がいるんですか?w」



またしても、予想もしていなかった
通り雨が降ってきた気がした

言葉が出てこない…


そんなにいきなり
考えがまとまる訳がなかった。



サトル君は、笑いながら言った



「ヒカちゃん、もう、1時間も
電話してるよ!俺達!w
哲郎…ヤキモチ焼くかも !」




「はあ?!」





「後は、哲郎本人に聞いて!w
今、ヒカちゃんに
嫌われちゃったかもって
凹んでるから…ね!」



たしかに、私は哲郎の行動を疑った。



他の女の子にも…同じ事をしていて
からかってる!って哲郎に言った。




外人さんのハグ!とかまで
言ってしまってる!!



哲郎は、違うって
一生懸命に言ってたのに。



「サトル君!
私が、哲郎に謝らないといけないかも
と、思うのね!」



「そうなの?w」



「説明するのは…難しいんだけど…
とにかく、哲郎に謝りたいの!私!
哲郎どこにいるの?」



「あいつは、真面目人間だから
家と部活の往復しかしなてないよ!
春休みは…部活終わって…いつも
3時くらいの電車に
乗ってるんじゃないか?」





「どこの駅で降りるの?」




「うわぁ……ヒカちゃん
すげぇ!!
哲郎がいつもどこの駅から
乗ってくるのかも知らないの?w」





「…私と同じ駅…だ!」





サトル君は、爆笑していたけど



私は、それどころじゃかった
時計を見たらもう、2時半を過ぎていた



「サトル君、ありがとう
私、哲郎に…謝りに行ってくる!」



「そっか!!俺も、勇気出して
ヒカちゃんに電話してよかったよ!
あいつ電話じゃ
ほとんど話さないから…なぁ!
一応、電話番号言おうか?」





「いや…顔を見て
話をしたいから…駅に行く!」




「わかった…邪魔しない!
覗いたりもしないから!俺!w
哲郎によろしくー!」




サトル君はそれだけ言って電話を切った。



私は慌てて…自分の部屋に戻り
クローゼットを開けた



いきなりの外出だから
洋服なんて、選んでもいなかった


とりあえず、目の前にある
大きな花柄のワンピースを着る


哲郎のことを
何も知らない自分を責めながら

髪にブラシを通し、日焼け止めだけ塗って

玄関に向かった。




「お母さん!ちょっと駅まで行ってくる!」




リビングからお母さんの声がする



「ヒカ!駅まで行くんだったら
帰りに牛乳を買ってきて!」



「……うーーん…
覚えてたら買ってくる!!」


そう、言いながら玄関を出た

本当に牛乳のことを
覚えておける自信がなかった。