電話の向こうのサトル君は
急に真面目で、真剣な声になった



「ヒカちゃんなら…
みんなに、言いふらしたり
しないと思うから話すんだけど。」



「うん…言わないよ」




「哲郎はさ…小学2年くらい?まで
だったと思うんだけど…
一言も話をしない子供だったの
お母さんとかが心配していてさ…
長く病院に通ってたんだ。」



「あの、哲郎が?
話をしない子供だったってこと?
全く、話せなかったわけじゃ
ないんだよね?」



「うん…ちっちゃい頃は…
家族としか話さなくて
自閉症じゃないか?
なんて、言われてた時もあったくらい
話さなかったよ…なんにも。」



サトル君は続けた



「ヒカちゃん、
哲郎を見ててわからない?
もちろん、今は
見ての通りよく笑うしさ!
話しもちゃんとできるけど!
やっばりさ…
人に囲まれるのは、
本当に苦手みたいだよ…。」




その話を聞いて…私は
はじめて哲郎に会った時からのことを

まるで、早送りするみたいに
回想してた


俺、騒がれるのが苦手…

って言ってたわ!!

あの時も、あの時も…




「………ヒカちゃん!?
ねぇ、ヒカちゃーーん!!
大丈夫?びっくりした?」




サトル君の声で我に返った




「なんだ…そうか!
早く言ってくれればよかったのに。
哲郎が…あまり
私と、喋らない理由がわかったよ…
嫌われてるのかと思ってたよ。」




サトル君の話によると
小さい頃から、家も近所だった
哲郎とサトル君は
何をするにも一緒だったらしく

哲郎は、自分の中で
この人とは話すと決めた相手にしか
話さない子供だったらしく

だから、自然と
サトル君が、哲郎の言葉を
周りの人に伝えるように
なっていったらしい



哲郎も成長するにつれて
ボソボソ話すようにはなったけれど

自分の本音を言うのはサトル君くらいで
あとは、抵当に合わせているだけ

名前を覚えてない友達もいるらしいw



「哲郎はさ…
あの見た目と、頭の良さで
誰からも気がつかれないよね!
でも…私のこと、ヒカリ!!って
呼んでくれたから……
少しは、マシなのかな?w」




「ヒカちゃんてさ…
天然ってゆうより、鈍感なんだね…w」



「なんで!?
名前覚えてもらってる!私!」



「あの哲郎だよ!?ほとんど人を
受け付けないタイプの哲郎だよ?!
女の子だって、受け付けないよ…
キャーキャー言われて
面倒なの!哲郎は!w」



「ええええ!あんなに楽そうなのに?」




「哲郎のあだ名は根暗なイケメン…w」




なるほど…わかりやすい!w


根暗なイケメン…一匹狼、1人が好き
謹慎処分に立候補…



言われてみれば、そのままの哲郎



私が、哲郎の見た目に
囚われすぎていたのかもしれない。



確かに、哲郎が自分から誰かに
話かけているのは、見たことがない


いつも、サトル君の側で
笑っているだけで

女の子たちの質問に答えているだけの
哲郎しか思い浮かばなかった



この時の私は、1人で哲郎のことを
色々と思い出していて

ほとんど、サトル君の電話の相手の役目は
はたしていなかったと思う…




「ヒカちゃーーん!
聞いてる?おーーい!」




つて、何回もサトル君に呼ばれた




「俺さ……哲郎といつも一緒だから
色々、心配することも多かったの。
あの見た目でしょ?
誤解されることも多いんだよね…哲郎
かっこいいから
いい気になってるとかさ!」




なんだか胸がチクッとした
私も、思ってたかもしれない、それ!




「はぁ…だから…
俺も、哲郎の初恋を応援したくてさ。
やりすぎた感じかな!」




「哲郎の初恋!!
そんな女の子がいたのね!!」



「………そりゃね!
哲郎にも初恋はあるよw
高校に入ってすぐ気になる女の子が
はじめてできたんだよ。」




「それ…応援したくなるよね!
で?どうなったの?」



「喋りかけるのが苦手だから
哲郎…2年間は片思いだったよ!」




「あの哲郎が!片思い!
もったいない…告白しちゃえば
うまくいったかもしれないのに!」



「………その女の子には
彼氏がいるって
噂で聞いていたからね!
哲郎も…だから片思い」




「哲郎……いい奴だね
横取りしようとか思わない所が!」




サトル君は
声にならない言葉を発した




「ぬぁぁああ…くぅぅ……
もどかしい…なんて鈍感なんだ!!」




もどかしい???


哲郎の初恋の話を
私は、もっと聞きたかった。