靴音が大理石の廊下に響く。
扉を開けるとちょうどカカオが階段を上がり、こちらに向かってくるところだった。
軽く談笑しながら、そのまま流れてカカオの部屋にいく。
最近は今日あったことをその日の終わりにカカオの部屋で報告するのが日課になっていた。
今日は特に何もなかったということを伝えると、カカオは「そうか」とだけ呟いた。
どこかいつもの彼ではないようで、不安になる。
「それより、今日はカカオ、どこに行ってたの?」
部屋に入り、カカオはソファに座ると、あたしにも前のソファに座るようにうながした。
なに?
「今日は、オスガリアに行っていた」
「っ……!」
思わず、叫びそうになってしまった。
なんで、オスガリアなんかに?
「大丈夫なの、カカオ!」
「なにがだ?」
「その、ケガとか!」
「今日は戦争しに行ったわけじゃないぞ」
そんなキョトンとした顔で言われても……。
なんて、敵陣に突っ込んで行ったの?
まだ、あの大きな戦争が終わってから、そんなに経ってないのに。
なんでわざわざ、オスガリアにまで……。
「大丈夫だ。 オスガリアは今回はアルバート率いるヴァンパイア軍団にことごとく武器という武器を破壊されたらしくてな。 アルバートは俺の言いつけを律儀に守ったらしい。 重症人は出なかったものの、主力の武器破壊という大打撃を受け、戦争どころじゃないらしい。 休戦中だ」
「休戦……」
それでも……カカオが心配だよ……。
向こうがなにをしてくるのか、わからないのに……。
「俺は今日、オスガリアの王と話をしてきた。 この戦争をやめられないものかと」
カカオはゆっくり語り出す。