部屋の窓を開けて、風を部屋に取り込む。


夏の夜だというのに、今は蒸し暑さはなく、ひんやりと冷たい風が素肌を撫でた。


 んー、気持ちいい……。


 着ている淡い青色のレースのワンピースが、風に揺られて優雅に泳いだ。


 そういえば、今日カカオを見てないな……。


 確か、なにか用があるとかで、どっかに出かけていって……。


 んー?


 どこだっけな。


 肝心なところが記憶から抜け落ちていて、なにも思い出せない。


 あれー?


 確かに朝、カカオから聞いたんだけど……。


 どうしても思い出せなくて、頭を捻っていたとき。



「王子が帰られました」



 門番の声が、城中に響き渡った。


 帰ってきた!