「確かに、俺は今いつもと少し違う」

「……なぜだ」

「簡潔に言うと、血を吸ったからだ」


 っ! なに⁉︎


「血を吸うことは禁じたはずだ」

「それは、『許可なく』吸うことを許さないのだろう? 許可ならきちんと貰ったさ」

「お前、まさか……」

「そう、その“まさか”だ」


 アルバートは長いマントを揺らし、ペロリと牙を舐めた。


 異様に長い、その牙。


 いつもより、紅い瞳。


 そして、かすかにアルバートから感じる──まおの香り。


 俺が気づいたことを察したアルバートは、くい、と尖った顎を後ろのほうを指した。


「彼女が王子を助けてほしいといったため、交換条件として血をもらった。 なあに、すべて飲み下したわけではない。 しかし、少し大変な状態になってるようだが……」

「くっ……!」


 アルバートが最後の言葉を言い終わる前に、俺は走り出していた。


 少し走れば、クコとリカエルがしゃがみこんでいるのが見えた。


 あそこか!


「まお!」

「あっ、王子!」


 俺に気づいたクコは、慌ててその場を避ける。


 そこには、青白い顔をしたまおが倒れていた。