「伏せろ、王子!」

「っ!」


 その声にとっさに身体をボルトの上に押し付ける。


 次の瞬間、凄まじい衝撃波が身体の上を通り抜けていった。


 そして、身体を起こせば、そこにいたはずの50人の兵士は皆、バタバタと倒れ込んでいる。


「いつから来ていた、アルバート」


 俺は、ボルトから降りると、アルバートに向かって魔術師たちが槍を向けていたので、手を挙げ、やめるよう命じた。


 そして、少し下がらせる。


「つい先程。 丁度王子がここに来たあたりからかな」

「お前一人か?」

「まさか。 数人手練れを連れて来た。 ちょっと手こずってるとこへ行くように手配はしたよ」

「助かる。 しかし、さっきのはいきなりなんだ。 驚くだろう。 もっと別のやり方はなかったのか」

「王子なら反応できると信じてやったのさ。 実際大丈夫だったろう?」

「あのな……」

「それにあれは……可愛い魔女さんのお願いでね。 『王子を助けてくれ』と」


魔女、とその形のいい唇が紡いだ途端、電撃が身体を走る。


 まさか、まおが?


 アルバートは、美しい微笑を浮かべた。


 彼は、いつもと違う雰囲気を漂わせいる。


 いつもより、強い魅力というか、引き付けられるもの。


 それと同時に感じる、圧倒的な恐怖……。


「お前はそんな雰囲気だったか?」


 妙な違和感を感じて、気づけば、そう問うていた。