だとしたら、やはりこんな戦争は……。


 考え込んでいたとき、突然耳に異様な声が聞こえてきた。



「王子! 逃げてください!」

「逃がすか! この王子を捕らえよ! 国王のまえに連れ出すんだ!」



 気付けば、俺と魔術師を囲むようにして、オスガリアの兵士が円を作り上げていた。


 ざっと見ても、50人はくだらない。


 魔術師たちが、なんとか防ごうとしてくれているけど、彼らも度重なる襲撃で、疲労が溜まっていた。


「ボルト!」


 俺がボルトの肩を叩くと、ボルトは高くいなないた。


途端にボルトの強烈な魔力が炸裂する。


魔力の波動は空気を震わせ、その振動は兵士たちにも伝わったらしい。


一瞬兵士たちの闘気が下がる。


 俺がボルトから飛び降りようと、足を上げかけたとき。


「お前ら、離れろ」


 冷たくて、それでもどこか飲み込まれてしまいそうな甘さを持つ声が頭上から降ってきた。


 この声は……。


 心当たりを覚え、振り向くけれど、もうそこにそれはいない。