「困ったことがあったら、遠慮なく話してね?」
「君は鈍いようで、鋭いんだから……」
見上げる私を安心させるように、若葉くんは微笑んだ。
「大丈夫。切羽詰まって悩むほど我慢してないよ。家に帰ったらちゃんと稽古をつけてもらってる」
「え、家で?」
「僕の師範、父さんなんだよ。仕事のない日は相手をしてくれるんだ。
心配してくれてありがとう。僕だって今まで積み上げてきたものを台無しにしたくないし、部活に入っていなくても腕は磨いてるから」
やりたいことを我慢してるんじゃないか?
私の心配事なんて、若葉くんにはあっさり見透かされてしまう。