「兄貴だったら、おふくろのことを理解してくれるって思った。親父がいない間、おふくろがどれだけ苦労してきたか一緒に見てきたから。
なのに、兄貴は親父を選んだんだ。……別れ際、アイツがなんて言ったと思う? 別れを惜しむおふくろに『馬鹿が。さっさと行け』っつったんだよ。
確かに、いつも馬鹿みたいに笑ってて絶対に泣かないおふくろが、泣いて俺のところに帰って来たんだよ……!」
震える声が秘めている感情は、憤怒と……慟哭。
「おふくろと一緒にいるって決めたんだ。なのに『母が死にました。養ってください』なんてノコノコ行けるわけねぇだろ!」
……だから居場所なんて、ないんだよ……。
言葉の最後は、弱々しく消えてしまう……。