納得する一方で、腑に落ちない気持ちを拭えなかった。

 脳裏をよぎるのは、漆黒と琥珀の光の下、一度だけ目にすることができた華麗な太刀さばき。



「……ねぇ、若葉くんが部活をしないのは、体質のせい?」



 若葉くんは、どこか人を避けているきらいがあった。


 満月を見て狼が哮(たけ)り立つように、狼のそれと同じように組み替わった遺伝子を持つ彼も気が昂る。

 そうやって理性を失ったとき、誰かを傷つけるのではないかと恐れていたから。


 でも、彼がひどいことなんて絶対にしないことを私は知っている。

 若葉くんは、優しい狼さんなんだから。