「だったら君の気持ちが追いつくまで、僕は待ってる」
「いいの? いつになるかわからないんだよ?」
「大丈夫。待ってる時間……セラちゃんと過ごす時間も、きっと楽しいだろうから」
そうして人懐っこく笑う顔が、あの頃と重なる。
「…………ソウ、くん」
「うん? 何か言った?」
「あ……何でもない! それよりお弁当食べなきゃだね!」
箸を動かすふりをして、真っ赤な顔を隠した。
……彼を名前で呼ぶのは、もう10年ぶりになるだろうか。
若葉くんにとって、私の名前を呼ぶことは容易いことなのかもしれない。
だけど私は違った。
ずいぶん変わってしまった彼を前にして、以前みたいに話せても内心気が気じゃない。
名前を呼ぶことさえも、躊躇してしまう。
それは若葉くんだけじゃなく、私も変わったからなのかもしれないね。