化学室を後にした僕。
昇降口へと向かう渡り廊下で、いまだ頭を悩ませていた。
僕が持っている『宝』とは何なのか? 考えるほどに謎が深まる。
「変なもの渡されるし、雅宏さんは何か企んでるし……セラちゃんは構ってくれないし。何なのかなぁ……」
心優しいセラちゃんのことだ。
見るからに色々抱えてそうな郁人くんを心配してあげているのだ。
それはいい、本人に気がないようだから。
だけど! それと自分が疎かにされるような事態に発展する因果関係がわからない!
今日だって一緒に帰ってたし!
「おーい朝桐(あさぎり)、持ってきてやったぞー」
「でかした日野(ひの)!」
「……何やってるんだ? お前ら」
「おお和久井(わくい)、お前も入れ! 今から愛のキャッチボールの猛特訓だ!」
……雑音が聞こえるが、放っておいて。