「彼女が人を好きだから、僕も好きになる。ただそれだけのことなんだよ」


「紅林第一主義だな」


「あれ、雅宏さんも僕第一主義じゃなかった?」


「…………」


「……何てね。僕のために徹夜で調査してくれたり、衝動を抑える方法を教えてくれたことはちゃんと覚えてるよ。ありがとう。親孝行はするよ」


「芳一(よしかず)には」


「しない」


「……泣くぞ、アイツ」


「知ったこっちゃありません。あんな馬鹿親」



 そう言ってまとめれば、雅宏さんも追及しようとはしなかった。


 立ち上がって試験管の置かれた教卓まで歩いて行く。

 ゴソゴソと探った後、何かを手に戻ってきた。



「今日の本題」



 プラスチックケースを手渡される。

 手の平サイズのそれはどう見ても……。