「人嫌いになった時期もあったけど、もう過ぎたことでしょ?」



 雅宏さんの言葉は、彼の言う大人たちの罪をすべて背負っているようだった。


 ――でも、それは違う。



「雅宏さんが全部背負うことはない。……守りたい人ができたんだ」


「……紅林か」



 核心を突かれ、苦笑した。

 教師がこんなことを訊くのはめったにないのだが、好奇心旺盛な元研究者の性か、それとも親心に似たものなのか……。