「最近、気になることはないか」
「あるよ。無性に調子がよくて。次の満月もよく晴れるみたいだねぇ」
「目の調子は」
「お察しの通り上々」
「次」
眼鏡を外すと、雅宏さんは白衣の胸ポケットに差してあったペンライトで僕の目を調べる。
「…………経過は正常だ」
その言葉で身体の緊張を解いた。
かけ直した眼鏡のレンズ越しから、カルテらしきものにペンを走らせている雅宏さんの様子をうかがう。
授業でなくとも白衣を手放さないものだから、はたから見ればまんま医者だ。
「……ねぇ、僕って毎月診てもらわなきゃいけないの?」
「元部下に頼まれてるんだ。大学に来ないなら、くれぐれも往診お願いしますってな」
「今度言っておいて。僕は何ともありませんって」