化学室に入ってすぐだ、なんとなく目にした試験管の口から煙が立ち込めていることに、身の危険を感じたのは。
「また実験してたの? 今度は学校燃やさないでね」
「これは線香だ」
「雅宏さんが本気出せば、線香もダイナマイトになるんじゃない?」
「……俺はテロリストか」
非常にわかりにくいが、ふてくされたように唇を尖らせる。
相変わらずなのがおかしくて、砕けた空気のまま居住まいを正した。
「それでは改めて。何のご用でしょうか、土屋先生?」
「よせ、堅苦しい」
「教師と生徒なんだから、一応」
「結構。お前もわかっているクセに言わせるな」
「はいはい」
生返事をしながら手近な椅子を引く。
雅宏さんは僕の向かいに座った。