嘲笑われないよう怯えて生活するんじゃない。
一緒に笑い合うために1歩を踏み出すことが、大切なんだ。
「……お気楽だね。でも悪くないんじゃない。その考え方」
肯定的な言葉を、初めて聞いた。
とっさに見た郁人くんの横顔は、ほんの少し、穏やかそうで……。
「なっ……ジロジロ見てんじゃねーよ!」
「え? あ、ごめんっ!」
「つーか俺、アンタのせいで疲れたんだからな! さっさと食って帰るぞ!」
顔を真っ赤にして不機嫌この上ない郁人くんを見るのは、なんか……初めてじゃないような……?
(……そんなわけないか。これまで会ったことないんだし)
こんな風に怒られるのが、彼と話してるときぐらいだった。
だからちょっと頭をよぎったのかな、なんて考えた。