「……ねぇ、郁人くん」
視線で示すと、公園に入ってきたばかりの若い女の子たちと目が合った。
その直後彼女たちがしていたことといえば、私のほうを見て何やら耳打ちをしたり……奇妙な目で、見たり。
「――っ!」
弾かれたように振り向いた郁人くんの顔が、徐々に熱で赤に染まっていく。
そんな彼とは対照的に、私は実にのんきな声で……声を演じて、言った。
「実際目立つし、人がたくさんいる場所に来ると、珍しくないことなんだよ」
「そんなこと!」
「怒ってくれるの? 郁人くんは優しいね。私だって慣れないな。慣れちゃいけないんだけど。
……慣れてしまったら、何を言われても何とも思わないってことじゃない。それは、正しいことを注意できなくなるってこと」