それから小一時間、私と郁人くんの闘いは繰り広げられた。

 そして。



「……はぁ、はぁ……なぜ、勝てない……」


「おあいにくさま。私、握力だけじゃなくて肩力もあるんだ」


「くそ……」


「まあ郁人くんの場合は体力だけじゃないね。ほら、木陰でちょっと休もう?」



 キツイのは本当らしく、郁人くんは顔をしかめながらも木陰のベンチに腰掛けた。

 その隣に私も腰を下ろす。



「うーん、久しぶりにいい汗かいた! ちょうどお昼時だし、郁人くんも一緒に食べようよ!」


「……は?」


「じゃーん、お弁当を作ってきました!」



 トートバッグから取り出したのは、私が心を込めて作ったお弁当。

 冷蔵庫にあるもので、できる限りのものを作った。

 いいんです、気持ちがあれば!