かくして4時間後、すべての準備は整った。



「郁人くん、私よ。入るけどいーい? いーよあらホントじゃ失礼しまーす!」


「なっ!」



 鍵を閉められないよう、さっさと部屋に入る。

 ちょうどドアを閉めたところで、駆け寄ってきた郁人くんの険しい視線とかち合った。



「……俺、言ったよな。関わんなって」


「残念。私の辞書にその言葉はなくて」


「ふざけてんの?」


「大真面目。さぁ、行くよっ!」


「ちょっ、おい! 何すんだ!」


「ずっと1人で部屋にいるから陰気になるの。天気なんだし、外に出なきゃもったいないじゃない」



 剣道により培われた私の握力は、普通の男の子1人くらいなら引っ張ることができる。

 ので、郁人くんをずるずると部屋から引きずり出す。



「どこに行くつもりだ!」



 なおも抵抗を続ける郁人くんに、満面の笑みを返す。



「すーっごく、楽しいところよ!」