特にあてもなくぼんやり歩く。 それでも、快晴の空の下、陽だまりを浴びながら歩くのはとても気持ちよかった。 ふと立ち止まる。 草花が覆い茂り、爽やかな空気が漂う場所。 そこは、あの場所に似ていた。 医大の中庭……かつて自分と彼女が大切な約束をした、あの場所に。 あそこほど広くはないけれど、見上げる空の広さは同じ。 目をつむると、記憶が蘇ってくる。 胸をいっぱいに満たすほどに、温かな記憶だ。