「……隼斗」



 唐突に彼女が呟いたのは、しばらく経ってからのこと。



「はい?」 



 聞き返す僕に、彼女は嬉しそうに口元をほころばせた。



「隼斗。子供の名前です。私は姉妹だったから、兄弟がほしいな!」


「……え、いくらなんでもそれは早すぎでは」


「いいえ。私の身にいつ何が起こるかわからないんですから、早いほうがいいです!」


「こら、そんな縁起でもないことを言わないでください」



 こつん、と握り拳を額に当てると、彼女がまた笑って空を見上げた。



「隼斗……はやぶさのように、この大空を力強く羽ばたいてほしい。2番目の子は……そうですね」



 今度は空から視線を外し、僕を見つめる。



「郁人。空の上からじゃわからない、人の心の細かいところまで思いやれる子に。明るくて活発な子になってほしいです」



 そう語るさまはとても嬉しそうで、到底口出しできそうにない。