「いいえ! どうせ教えてくれないんでしょ!」
ぷい、と顔を背ける。
すると、くすっと笑い声がして。
「いいよ。教えてあげる」
思わず顔を戻したその瞬間――固まってしまった。
私を襲ったのは、柔らかくて、熱い感触。
それが、触れるか触れないかという、唇の端に。
「……わかった?」
……ほんの少し。
ほんの少し風が吹いたような、そんな軽いキス。
だけどその風に、小枝の葉っぱを落とされたような気分だった。
「っ! ごめんなさいよくわかりましたありがとうございますそれではさようならっ!」
――気づけば、全速力で走り出していた。