「……セラちゃん」
「あ、はいっ、何でしょ……きゃっ!」
軽く身体を押されて、とん、と壁に背がつく。
気づいたら、若葉くんの両腕の中に閉じ込められていた。
後ろは壁。
逃げられん……というか、何でこう都合よく壁があるんですか!!
「若葉くん、顔近い近い!」
「駄目。僕を見て」
押し付ける腕はそのまま、手首の動きだけで顔を正面に戻される。
至近距離で彼の顔を見てしまったときには、ポンッ、と頭が爆発しそうだった。
「……近付けばそうなるのに、どうして気づかないかなぁ」
「よよよ、よくわかりませんが、怒ってらっしゃいますか??」
「ええ、とても。仕方ないんだからね。今までずっと郁人くんと2人っきりで暮らして来てたんだし。
僕だって色々我慢してたんだから、少しくらいワガママ聞いてもらってもいいと思わない?」
「……え? ワガママ?」
身の危険を感じるのは私だけですか。