「私ってあんまり役に立ってなかったよ? 特に事件の日は」



 思い出して、苦笑いが漏れる。


 今だから笑って済ませられるけれど。



「でも、セラがいたから若葉もあの3人も集まってきたし、何より、そこに辿り着くまで説教されて、励まされた。セラがいたから俺は強くなれた気がする。ありがとう」


「郁人くん……」


「……だけど、アンタに守られるようじゃ、俺はまだまだだ。

 俺はこれからもっと強くなる。誰にも負けないような強い男になって、大切な人を守れるようになりたい。

 そのためにもここを出て行くよ。俺はアンタにそう宣言するために来た」



 ゆっくりと歩き出した郁人くんは、私たちの横を通って、止まる。