「紅林」


「うん?」


「2回」


「……何がでしょうか?」


「借りだ」


「またまた~。貸し借りとかいいって言ってるのに」


「ざけんな。押し売りでも借りっぱなしってのがシャクなんだよ」



 押し売りって!


 いや確かに家に押し掛けたりしたけど!



 複雑な笑みしか浮かべられずにいると、ぶしつけに若葉くんを指差した隼斗が、半ば食い付き気味に詰め寄ってきた。



「いいか、今度なんかあったらまず俺に言え。そこの犬野郎よりも先にな。2回までは無条件で助けてやる」



 一息にまくし立てた後、ちいさく付け足された言葉に目を見張る。




 ――悪かった、色々。



 直接的な言葉じゃなくても伝わってきた、感謝の気持ち。


 家族と一緒に笑えて、友達と冗談を言い合える。


 そんな普通の1日がやっと彼にも訪れたんだって実感できて、思わず顔に出ちゃうくらい嬉しくなった。