「何だよ……ニヤつきやがって」


「ううん?」



 やっぱり、心根は優しい人。


 彼の素顔が垣間見えるようになって、なんだか嬉しいな。



「それで、どうだった?」


「全部、終わった」



 隼斗はもと来たらしい道を見つめ、瞳を細めた。



「叔母さんが最大限先延ばしてくれてたからな、家族全員で出ることが出来た。

 ……親父、泣いてたよ。眠ってるみたいに綺麗だってな。郁人は言わなくてもわかるだろうが」


「……そっか」



 宗雄さんが逮捕されたことで、隼斗の停学は解けた。


 けれど彼にはやらなければならないことがたくさんあった。


『家族』として新しく踏み出すための準備。


 そのひとつが今日この日……そう、彩子さんのお葬式だ。



 母の死に触れ、きちんと見つめることがどんなに勇気のいることか、両親がいる私にはわからない。


 それでも、応援することは出来る。


 彼がこれから歩んでいく手助けになりたいと思う。