「隼斗!」
「……ん」
足取りも軽く駆け寄れば、身を起こした隼斗と向き合う形になる。
ワイシャツの上に紺のジャケット。
私たちと同じように衣替えした彼は、いつも緩いブルーカラーのネクタイをきちんと締めている。
「しっかりしてると、結構違って見えるね。全然怖くない」
「顔は生まれつきだバカヤロー」
仏頂面で反論されるのが今はおかしくって、笑ってしまう。
こうして話せるの、1週間ぶりだしね。
彼の本名は八神隼斗。
前に「名前を呼ばれるのが嫌いらしい」と朝桐くんから聞いたけど、それは城ヶ崎姓だったから。
本当の名前を取り戻した今、隼斗の表情はどこかやわらかくなった。
何より、呼んだら短いけれど返事をしてくれる。