霧島家、世紀の大乱闘があった客間を通り過ぎ、突き当たりの部屋に入る。


 私と若葉くんが行ったときには、すでに聴診器をつけておばあさんを診察している八神さんの姿があった。



「風邪ですね。医院の者に言ってお薬を届けさせます。

 ……近頃お姿が見えないので心配いたしました。ご無事で何よりです」



 穏やかに笑いかけるけれど……その様子を見つめる隼斗と郁人くんのように、気まずくないわけがなかった。


 なぜなら彼らは、2人の結婚に猛反対し、宗雄さんをこの家に迎え入れた張本人たちなのだから。



「……恨んでいるか」


「何をです?」


「わしたちの罪だ」



 少しの沈黙の後、八神さんが静かに首を振る。