「それでも向かってくるということは……」



 スッと瞳を細めた彼は、宗雄さんの手から零れ落ちた『それ』を握り締め――身動きできない宗雄さんの頚動脈に、押し当てる。



「どうやら、解体(バラ)されたいようですね……?」



 銀色に光る『それ』は紛れもなく……メス。



「……義兄さん、パッと見銃刀法違反」


「正当防衛ですのでご心配なく」


「……宗雄さんが哀れね」



 これにはさすがの歩美さんも苦笑いだ。



「……ま、待て八神!」


「何を待てばいいんでしょう?」


「お前、医者がそんなことをしていいと思っているのか!?」


「同じ医者の風上にも置けない人に言われたくありませんが……

 医者である以前に私は1人の夫であり、父親だ。家族を侮辱する者は誰であろうと許さない!」



 言葉と共に、メスが振り上げられる……。