「ほら、立て」



 郁人くんの手を取った隼斗は、それからわざとらしく肩を竦めてみせた。



「ったく、気が早いっつーの。俺たちに任せておけば心配ねぇのに」


「……『俺たち』?」



 ニッと口角を上げた隼斗が、八神さんを振り返る。


 八神さんは、力強く頷いた。



「……どういう、ことだ。隼斗、お前は意識がなかったはずじゃ……。

 っ! さゆりは!? アイツはどこに行った!?」


「もー、騒がしいわねぇ。ここにいるわよ」


「! おいさゆり、どういうことだ! 隼斗を痛めつけたんじゃ……」



 振り返った宗雄さんが、硬直する。



「痛めつけるー? 何であたしがそんなことしなきゃいけないわけ?」



 次いで私も驚愕する。



 部屋に入ってきたのは1人の女性。


 けれど、予想とはまったく異なった容姿の持ち主だった。



「まさか、そんな…………お前は、彩子?」