「闘えるお医者さんってカッコいいですけどねぇ、そっちにはか弱いお嬢さんがいらっしゃりますでしょ?」
「足手まとい」と言われたようだった。
……悔しい。
自分の不甲斐なさが、恨めしい。
「セラさん、お逃げなさい。私が隙を作ります」
「八神さん!? そんな!」
「私たち大人の問題を、何の関係もないあなたに押し付けたことが間違いだった。
こうなるかもしれないと思ったからこそ、言わなかった。守りたかった……あなたが傷ついていいはずがありません」
静かな言葉が、ひどく優しくて……自らの身を賭して闘うつもりなのだと、悟らされた。
「……そん、な……」
涙が溢れる。
彼の決意に見合う力を、私は持っていないのだ。
八神さんが正面を向き、男たちと宗雄さんを見据える。
「驚いた。本当にやるんですかね。勇気があるというか無謀というか……」
「手加減はいらない。隙を見せればあの男はどんな手でも打ってくる」
「……了解!」
男が下唇を舐め、1歩踏み出す。