「……若葉に言われた、からな。自分がいないときは、セラを頼む、って」
「そんなこと……!」
しなくてもいい。
誰かが傷つくのはもういや……!
「お前も物好きだな。たかが女1人ぐらいでムキになって」
力なくもたれかかる郁人くんの肩越しに、右手をヒラヒラさせながら嘆息する宗雄さんを見た。
とたん、形容しがたい熱が身体の奥から沸き上がる。
「どうしてこんなことをするの!? 郁人くんはあなたの息子でしょう!?」
「息子? ああ息子ね。いないいない。クソやかましいガキなんざ、はなから俺にはいねぇよ」
鼻で笑い飛ばした宗雄さんは、不気味な笑みを貼り付けたまま郁人くんを覗き込む。
「いいことを教えてやろうか郁人? お前は、俺の息子じゃない」