「俺が手本を見せてやる。ガキならガキらしく親の言うことを聞け、郁人」


「……やっ……」



 冷たい表情で……でもその中に笑みを浮かべて、私を、見下ろす。



「やめろ親父っ!!」


「よく見ているんだな。お前のその目で、この女が泣き叫ぶ様を!」


「いやっ!!」



 腕を掴まれていて、逃げられない。



 怖い、怖い……怖い……っ!



 目をつむる。強く。


 とても強くつむった一瞬後――衝撃が身体を襲う。



「うぁああ……っ!!」



 呻き声。


 でも…………私じゃ、ない。



「え…………」



 硬いまぶたをこじ開けた先に、私を庇うように抱き締める、郁人くん。



「郁人くん!? 郁人くん、しっかり!」


「……セラ……大丈夫、か。……どこも、痛くない……?」


「痛くない! 痛くないよ! だから郁人くん……っ!」



 滲む視界で、彼が激痛に顔を歪めながらも笑ったのがわかった。