「それは……どういう、意味?」
「言葉通りさ。我々は常に時間に追い立てられているというのに、患者といつまでもつまらん話を続ける。
それだけでなく、やたらと患者の家事情に首を突っ込み、引いては俺たち家族までもを引き裂いたのだぞ?
そんな男は同じ医者の風上にも置けん。そういうヤツから先に落ちていくのさ。
だからな郁人、この厳しい世界を生き抜くためにいいことを教えてやる。何、簡単なことだ。すぐに出来る」
「お、やっとりますなぁ。お話はもう出来たんで?」
襖が開き、さっきの人と同じ雰囲気の、中年男性が姿を現した。
「ああ、ちょうど今からでして」
「お? 将来有望な御曹司の世紀の瞬間ですか? 面白そうですな。見物しても?」
「ええ、どうぞ」
何やら親しげに話した後、宗雄さんは私たちを振り返る。