「郁人くんっ!」



 彼を見つけたのは、街はずれの道。


 飛び出したときの勢いはもうなく、力なく歩く後ろ姿は私の胸を痛めさせた。



「……俺、どうしたらいいんだろう……」



 ふと立ち止まった彼に追いつく。途方に暮れたそれを聞くのは、2度目。



「戻ろう? 八神さんと仲直りしよう? 八神さんだって、きっとそうしたいはずだよ」


「そんなのわかってる……っ! だけど、先生じゃ駄目なんだよ! 親父だっておふくろのこと考えてて……っ。

 どっちも選ぶわけにはいかないんだ。明らかに先生のほうが悪いんだ。

 ……そう思うのに、先生のことが好きだから、選べない……。タダ先生と、離れたくない……」



 力なくしゃがみ込む郁人くん。


 その傍に、私も屈む。


 ……屈み込んで、肩を抱いてあげることしか出来ない。でも。