「人ってのは、独りじゃ絶対に生きていけないもんだ。ずっと見てると、思うんだよ。
孤独なヤツほど心の奥底で助けを求めていて、でもそれ以上に自分でどうにかしようって背伸びしてるってな。
それはアイツだけじゃない。お前もだな」
「私も?」
「アイツがいない間、お前がどんな思いをしてきたか、俺は知っている」
「そう、ですか」
「『なぜ助けてくれなかったのか』と、聞かないのか?」
まぶたの裏に焼きついた、忘れられるはずもない視線、言葉。
思い出すほどに胸を痛めるはずだけれど。
「私、思うほど辛くはなかったんです。壬生狼(みぶろ)が……若葉くんが、そばにいてくれましたから」
胸の前で握った手が思い出させてくれるのは、触れた手の温かさ。