「……何だよ、それ。じゃあ親父が出て行ったのは、先生とおふくろが不倫してたからだってことか……!

 しかも、それだけじゃない。親父とは……望まれてない結婚だった。おふくろは、親父のことを好きじゃなかった……俺たちのことも!」


「郁人くん、それは違う!」


「だってそうだろ!? 好きでもないヤツとの間に生まれた子供だ!

 そんな悪夢の証みたいなもん、見てて嬉しいはずねぇだろ! 心のどこかで、俺たちのこと嫌ってたんだ……っ!」



 ――パァンッ!!



 郁人くんが「え……」と声を漏らし、頬に手をやる。



「――いい加減にしなさい」



 呆然とする郁人くんの目前で怒りと悲しみに打ち震えていたのは、八神さんだ。


 普段の温和な彼からは想像もつかない剣幕で、声を張り上げる。