「私が本人に聞いた限りでは、宗雄さんについて行くほうがよかったと言っていたような気がします」
「……そのほうが楽な生活が出来るからだろ」
「ううん、そうじゃないの。城ヶ崎は言ったわ。『どうせなら郁人もついてくればよかったんだ』って。
私、考えたの。彼の言う『宗雄さんについて行くほうがよかった』っていうのは、『誰にとってよかった』のかなって。
……それは多分、彩子さんなんだと思う。出来るだけ彼女の負担にならないように。……お母さんが、長く生きていられるようにって」
「だったら、そう言ってくれたらよかったじゃんか。何で兄貴は言ってくれなかったんだよ!?」
「……それは、君のためでもあったからだよ」
「タダ、先生?」
「たとえどんなに負担がない楽な状態だったとしても、周りに家族が誰1人いない状況に、君は耐えられる?」
「……っ!」
「そんなことをしたら、精神的に彼女を追い詰めてしまう。
では誰を残すかを考えたときに、隼斗くんは君を選んだんだ。母想いの君にすべてを託して……」
誰もが黙り込んでしまう。
それは城ヶ崎の、家族を想う気持ちが起こした出来事……。